星降る場所を求めて

【WBPP 2.9.0】新機能「フレーム選別」の仕組みと使い方を徹底解説

PixInsight に新しく追加された WBPP 2.9.0。
今回のアップデートで、ついに 「フレーム選別(Frame Selection)」機能 が実装されました。

これまでは、撮影したサブフレームを手動で確認しながら
「ボケてるフレームは捨てよう」「雲が通ったところは外そう」
…と、かなり時間のかかる作業を行っていました。

ですが今回のアップデートにより、
ピント・ガイド精度・透明度・雲の通過 などを数値で評価し、
積分前に自動で “良いフレームだけ” を選別できるようになったのです。

この記事では、その中でも特に重要な評価指標
FWHM / Eccentricity / PSF Signal Weight / Median / Stars
について、天体写真家目線でわかりやすく解説していきます。

PixInsight公式フォーラムはこちらです。

フレーム選別とは?

簡単に言ってしまえば、
「積分(スタック)に使うべき優秀なフレームだけを残す作業」です。

WBPP 2.9.0 の新機能により、以下のようなことが自動で判断可能になりました。

  • ピントが甘いフレームを外す
  • ガイド流れで星が伸びたフレームを外す
  • 雲の通過で透明度が落ちたフレームを外す
  • ノイズの多いフレームを外す
  • 全体的な画質が悪い時間帯を外す

天体写真の仕上がりは、使うサブフレームの質の平均値で決まります。
だからこそこの選別作業は非常に重要です。

使用方法

上記の画像の赤枠部分、WBPPのLightタブ ”Frame Selection”にチェックを入れると使用可能となり、また、”interactive”にチェックを入れることでWBPPの処理過程でユーザーでフレーム選別が可能となります。

↑WBPPの実行モニター画面の赤枠の部分でフレーム選択画面↓となる。

ここから細かい設定を行うのだが、上記画像の右上の”Rejection Filters”で除外するフレームのしきい値を設定する。

PixInsight側で自動で計算したしきい値が表示されているので、適用したい項目にチェックを入れれば正常な画像だけ選択できることとなる。普通はこちらの方法をおすすめします。

細部評価項目の説明

指標数値の意味(詳しく)どんな問題を見抜ける?実際にどう除外判断する?
FWHM (星像の太さ)星の“光の山”の横幅。小さいほどシャープで、ピント・ガイド・シーイングが良い。✔ ピントずれ
✔ シーイングの悪化(瞬間的な空気の揺らぎ)
✔ ガイドエラー(RA/DECどちらかが暴れた)
✔ 風揺れ・鏡筒振動
平均より明らかに大きい値を除外
例:その夜の平均 FWHM が 2.4px なら → 3.0px 超えは落とす
Eccentricity(偏心率)星がどれくらい“楕円形”になっているか。0.42〜0.45 が円に近い。✔ ガイド流れ(RA または DEC 片軸の乱れ)
✔ 風で星が伸びた
✔ 極軸ズレによるドリフト
✔ 枠の端で伸びる光学系のクセ
0.60 以上はほぼ確実に星が流れているので除外
0.55 前後も要注意
PSF Signal Weight(総合画質スコア)星像のシャープさ・SNR・星数・背景レベルなどを総合評価した PixInsight 特有の“画質GPSのような数値”。高いほど良い。✔ 全体的な画質の良し悪し
✔ ノイズの多少
✔ ピント
✔ 透明度
✔ フレームの一貫性(安定した時間帯)
上位 70〜85% を採用すると、ほぼ最適なフレーム構成になる
この指標が最も使いやすい
Median(背景輝度の中央値)画像全体の明るさの中間値。高い=空が明るい・透明度が悪い。✔ 雲の通過(特に薄雲)
✔ 透明度低下
✔ 光害・かぶり増加
✔ 月明かりの影響増大
平均より+15〜20% 高いフレームは除外
雲・透明度の悪化が一発でわかる
Stars(星の検出数)フレームから検出された星の個数。透明度が良くピントが合っているほど多い。✔ 薄雲の通過(星が減る)
✔ ピントずれ
✔ ガイドミスで星が伸びて検出できない
✔ レンズ曇り・結露
他のフレームより著しく星数が少ないものを除外
Median とセットで雲の判定が最強

ここからはちょっと踏み入った話です・・・

1. FWHM が悪い時(高い値)

例:

  • FWHM が その夜の平均より 20〜30% 以上大きい
  • 星が太っている
  • 星が丸いがダルい

→ シーイング悪化 or 風で揺れた or ガイド不安定
→ 積分に入れると画像全体がボケる原因になるので除外

2. Eccentricity が高い(星が伸びている)

  • Eccentricity が 0.60 以上
  • 一部だけ丸いが全体的に伸びている
  • RA/DEC の片方向にだけ流れている

→ 星像が伸びるのは画質上の最悪要素
→ 少しでも悪いものは容赦なく除外するのがプロのやり方

  • 画質が全体的に悪い時間帯
  • 透明度の悪化
  • ピントズレ
  • ノイズ増加
  • 星が締まっていない

→ 複合的に「そのフレームは平均より悪い」と判断されている証拠
→ この指標の下位 20〜30% を除外するだけで劇的に画質が向上します

例:

  • 薄雲で背景が明るい(Skyglow)
  • 月が雲に反射して背景レベルが上がる
  • 大気の透明度が悪くなった
  • かぶり発生

→ SNR が悪くなるので積分に入れるとノイズの元
→ この値が高いフレームは落とすのが最適解

5. Stars が少ない(星数減少)

  • 雲で星が隠れた
  • ピントがズレて星が点として検出されない
  • ガイド流れで“星”として認識されない
  • レンズ曇りなど光量低下

→ Median と Stars のセットで故障原因がほぼ特定できる

例:

★ 雲通過フレームの典型例

  • Median ↑(明るい)
  • Stars ↓(星の数が少ない)

★ ピントずれの典型例

  • Median →(変わらない)
  • Stars ↓(減る)
  • FWHM ↑(太る)

結論:

① まずは PSF Signal Weight(総合スコア)

→ 下位20〜30% を落とすだけで劇的に改善
→ “PixInsight が全部判断してくれる”指標

② その次に Eccentricity(歪み)

→ 星が流れたフレームは絶対に使ってはいけない
→ 0.60以上は100%除外

③ FWHM(シャープさ)

→ 平均より明らかに大きいものは除外
→ ボケフレーム排除で画質UP

④ Median & Stars(透明度・雲)

→ 雲通過フレームを確実に除外できる
→ 特に薄雲に強い

⭐ まとめ:フレームを“削る苦しさ”から、やっと解放される時代に

天体写真の世界では、ピント合わせやガイド調整、画像処理など
やるべき作業はいくつもありますが、
その中でも フレーム選別は最も面倒で、そして精神的に重たい作業 でした。

特に、晴れ間の少ない地域では
「せっかく撮れたサブフレームなのに・・・」
「ちょっと流れてるけど使いたい・・・」
と、1枚を捨てるたびに胸がチクリと痛むような、
そんな葛藤がつきまといます。

けれど WBPP 2.9.0 の新しい「フレーム選別」は、
その迷いをすべて数値で客観化してくれる頼もしい存在です。

  • 星のシャープさ(FWHM)
  • 真円度(Eccentricity)
  • 透明度や薄雲の影響(Median / Stars)
  • そして総合的な画質(PSF Signal Weight)

これらをもとに、“積分に使うべきフレーム” が自動的に揃っていくので、
これまでのように感情で揺れながら削っていた時間は、もう必要ありません。

むしろ、
「残すべきフレームだけを正しく残せる時代になった」
といった方が正しいかもしれません。

天体写真は、撮影できる夜自体がとても貴重なもの。
だからこそ、その1枚1枚に思い入れが生まれるのだと思います。

今回のアップデートは、
その大切なフレームたちに“公平なジャッジ”をしてくれる、
いわば 信頼できる第三者の目 を手に入れたような感覚です。

これからは、
選び抜かれたサブフレームたちで、
より美しく、より深い天体写真を楽しんでいけるはずです。

WBPP 2.9.0 のフレーム選別は、
天体写真のクオリティを一段階引き上げてくれる、
そんな大きな進歩だと感じています。

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