星降る場所を求めて

1 WBPPの概要と考え方

― なぜWBPPは“前処理の要”なのか ―

PixInsight における WBPP(WeightedBatchPreProcessing) は、天体写真の画像処理において、最初に通る重要な工程を担うスクリプトです。

便利な一括処理ツールとして知られていますが、WBPPをうまく使いこなすためには、
「何をしているのか」「どういう考え方で設計されているのか」を理解しておくことがとても大切です。

このページでは、WBPPの思想と全体像を整理していきます。

WBPPとは何をするスクリプトか

WBPPは、公式に次のように説明されています。

A script to preprocess, register, and integrate images.

つまりWBPPは、

  • Preprocess(前処理・キャリブレーション)
  • Register(位置合わせ)
  • Integrate(画像統合)

という、天体画像処理の最初から最後までを一連の流れとして実行するスクリプトです。

これらは本来、それぞれ別のプロセスとして手動で行うものですが、WBPPではそれらをまとめて管理・実行できます。

手動処理との対応関係

WBPPの中で行われている処理は、PixInsightの個別プロセスに置き換えると次のようになります。

  • ImageCalibration
  • CosmeticCorrection
  • StarAlignment
  • ImageIntegration

WBPPはこれらを「勝手に省略」しているわけではなく、正しい順序で自動的につないでいるだけ です。

そのため、WBPPを理解することは、PixInsight全体の理解にも直結します。

WBPPは「自動処理ツール」ではない

WBPPはよく「全部自動でやってくれるツール」と思われがちですが、実際には少し違います。

WBPPは、

  • どのフレームを使うか
  • どの関係性で補正するか
  • どの基準で統合するか

といった 判断そのものはユーザーに委ねている スクリプトです。

つまりWBPPは、処理を自動化するツールではなく、処理の流れを整理するツールと言ったほうが正確です。

WBPPの設計思想:関係性を明示する

WBPPの最大の特徴は、
フレーム同士の関係性を明示的に管理する 点にあります。

  • このLightは、どのDarkで補正されるのか
  • このFlatは、どのBias / Darkを使うのか
  • その結果、どのMasterが生成されるのか

これらの関係を、ユーザーが「見える形」で確認できるようになっています。

WBPPの画面が少し複雑に見えるのは、この関係性を正確に表現しているからとも言えます。

なぜ「順番」が重要なのか

WBPPでは、処理の順番が厳密に決められています。

  1. Bias
  2. Dark
  3. Flat
  4. Light
  5. Registration
  6. Integration

この順序が崩れると、

  • フラットが効かない
  • 背景ムラが残る
  • ノイズが増える

といった問題が起こります。

WBPPは、この正しい順序を強制的に守らせる仕組みでもあります。

WBPPはどんな人に向いているか

WBPPは、次のような方に特に向いています。

  • PixInsightをこれから本格的に使いたい方
  • 前処理の流れを整理したい方
  • 手動処理の手間を減らしたい方

一方で、
すべてを理解せずに使うとトラブルの原因にもなるため、
最低限の考え方を押さえておくことが重要です。

WBPPを理解すると何が変わるか

WBPPの概要と思想を理解すると、

  • 設定に迷わなくなる
  • 失敗したときに原因を切り分けられる
  • 後処理(ストレッチ・色調整)に集中できる

ようになります。

WBPPは「地味な工程」ですが、
最終的な作品のクオリティを大きく左右する土台です。

WBPPの具体的な設定方法や各タブの詳細については、
以下のメイン解説ページで詳しく紹介しています。

PixInsight WBPP 完全解説(リンク)

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