星降る場所を求めて

今年のM31は“ぎゅっと全部のせ”で

11月19日(水)

ここ最近、分子雲や淡い星雲ばかりを追いかけていて、モニターの上も“薄いモヤモヤ”だらけになっていました。
それはそれで楽しいのですが、ふと「一度、原点に戻ってみたいなぁ」と思い立ち、今回は王道中の王道――アンドロメダ銀河(M31)を撮影してみました。

宮古島ならではの素晴らしい環境
街明かりの影響が少ないエリアでは、肉眼でもM31がうっすらぼんやりと見えるほどの暗い空が広がっています。
そんな贅沢な場所での撮影は、やっぱり気持ちが違いますね。
「ここで撮るM31はどんな姿になるのかな」とワクワクしながら構図を決めていきました。

せっかくなので、ただ撮るだけではなく、これまで積み上げてきた画像処理のスキルを全部注ぎ込んで「今年のM31」を形にしてみよう、というのが今回のテーマです。

久しぶりの“明るい天体”撮影

暗い天体ばかり追いかけていると、構図決めの段階ではほとんど何も写っていないので、どうしても不安になります。
その点、M31はライブビューやテスト撮影の段階から、しっかり銀河の姿が姿を現してくれる頼もしい存在。

構図を決めて、ガイドが安定したら、あとはひたすらシャッターを切るだけ。
撮影中のモニターには、ぐるりと広がる渦巻きと、M32・M110の姿が少しずつ濃くなっていく様子が映し出されていきます。

「やっぱり明るい対象は楽しいなぁ」と、ちょっと初心に返った夜でした。

M31,アンドロメダ
昨年12月に宮崎で撮影したM31 懐かしい〜今と違って雨を気にせず夜を過ごしていたことがうらやましい〜

RGBにHa・OⅢをブレンド

今回は、RGBだけで終わらせずに、HaとOⅢも追加で撮影してブレンドしてみました。

  • RGB画像
    銀河全体の色味と星の自然な色合いを担当。
    バルジの黄色味と、腕のやや青みがかった色が分かるように、ホワイトバランスと彩度を調整しています。
  • Ha(Hα)
    銀河内の散在する赤いHⅡ領域を強調するために使用。
    Haだけをストレッチし、星や銀河本体が暴れないようにマスクをかけながら、赤いガスの成分だけをRGB画像にそっと重ねています。
  • OⅢ
    こちらは控えめにブレンド。
    細部でほんのり色の変化が出る程度にとどめて、全体のバランスを崩さないようにしました。

派手にしようと思えばいくらでも強調できますが、「肉眼では見えないけれど、そこに確かに存在している淡い光」を意識して、あくまで自然な範囲で仕上げています。


バルジと渦巻腕の立体感を狙う

今回の処理で一番こだわったのが、中心部のバルジと、その周りを取り巻く渦巻腕の構造をはっきり見せることです。

  • 中心のまぶしいバルジは、少しでもストレッチを強くするとすぐに白飛びしてしまうので、HDR系の処理を使って階調を引き出しつつ、丸い立体感は失わないように調整。
  • 一方で、外側の腕の部分は、ダストレーンや散在する星々が見えてくるように、局所コントラストを少しだけ持ち上げて「もやっ」とした部分を整理していきました。
  • 仕上げに、星のシャープさと銀河の柔らかさのバランスを見ながらノイズ処理を行い、「中心から外側へ視線が流れていく」ようなイメージでコントラストを整えています。

処理を進めていくうちに、バルジの丸い膨らみと、そこから伸びる腕のうねりが、だんだん立体的に浮かび上がってくる瞬間があり、「あ、今年のM31はここまできたか」と、ひとりニヤニヤしてしまいました(笑)

M31 AskerFRA600 ASI6200MCPro FullSize Gain100 0℃ RGB:12x300s AskerColorMagicD1:15x300s PixInsight

これまでの積み重ねを“見える形”に

淡い分子雲や暗黒帯、惑星状星雲・・・
ここ数年、様々な対象で試行錯誤しながら覚えてきた画像処理のテクニックを、今回はM31にぎゅっと詰め込んでみました。

  • ダイナミックレンジの広い対象をどう料理するか
  • 狙った部分だけを強調して、全体は破綻させないやり方
  • ナローバンドの情報を、自然な色のままRGBに溶かし込む方法

そういった細かな工夫の集大成として、「今年のM31」を形にできたかなと思っています。


さいごに

明るい定番天体は、つい「いつでも撮れる」と後回しにしてしまいがちですが、
今の自分のスキルを確かめたり、成長を実感したりするには、これほど良い“基準”はないのかもしれません。

来年のシーズンには、また一歩進化したM31に出会えるように、これからも暗い天体と明るい天体を行ったり来たりしながら、撮影と画像処理を楽しんでいきたいと思います。

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